
寿町の歩行者用道路は緑色の塗装が施されている。わざわざ車道とは違う色で塗っている訳だから何か意図があるはずだ。恐らくは酔っ払いが車道に飛び出す恐れのないように車道と歩道の違いを分かりやすくしているのだろう。緑の所を歩いてね。という訳だ。こういった事にまで頭を回せるのが日本人の良い所だと思う。ペンキ代も工費もかかるのにありがたいことだ。ドヤ街ではあるが人の優しさはある町だ。

寿町の数少ない宿の前に電動キックボードが設置されていた。運転には小型特殊免許が必要のようだ。寿町にはドヤは沢山あるが宿は少ない。お洒落なドヤもいくつかあるから外見だけではドヤか宿か分からない建物もある。そんな中こちらの宿はひと目見ただけでドヤではないと即答できる宿だ。宿とドヤの違いは設備やサービス面など細かい点では色々ある。まぁ大まかに1つ挙げれば客層が違う。こちらの宿は横浜観光のお客さんを多く宿泊させている。コロナ前は外国のお客さんも多かったようだ。反対にドヤに観光客が泊まりに来ることはまず無い。ドヤの客の大半は僕みたいな長期滞在者だ。
去年だったか寿町の外れに巨大なマンションが建設された。寿町住民とは明らかに異なる身なりのいい人達が出入りしている。ただし立地は完全に寿町の中だ。社会で立派に働いている人達が住んでいるのだと思うだけれども彼らも当然寿町に住んでいる以上寿町の住民だ。
寿町にしか存在しないような古くて汚いドヤも多くある。よその街では見かけないような手入れのされていない身なりをしている人も居る。だが他の街との違いが曖昧な建物と住民も大勢いる。上記の宿やマンションはその典型だ。おそらく昔はもっと境界は鮮明だっただろう。ドヤ街にはドヤ街に住むような人と建物しか集まらなかったはずだ。今の寿町は昔よりもドヤ街としての要素は薄まっているだろう。ドヤでは無く宿の需要も今後増えるはずだ。
酉の市真っ最中に開催場所のど真ん中に建つマンションから配達の依頼があった。配達先のマンションまで自転車で乗り入れることが出来ない。

この先は凄まじい人混みだ。若者カップルや家族連れが大勢いる。すり抜けて進むのも難しい状況だ。仕方ないから集団の後ろについてのろのろと歩いて行く。コロナ初期の頃ならこういった人混みを避ける人がほとんどだったように思うがマスク無しで飲食しながら歩く人の姿も多く見られた。当の僕も大して気にせず人混みの中を歩いた。歩いていた時はコロナのことなぞ意識に無かったと言った方が正確だ。全く気に掛けなかった。今文章を書いていてそう言えば大丈夫だったかなと思っている。コロナ問題は未だ解決していないが人の意識はコロナ初期と比べて大きく変わった。
配達までの道も自転車へ戻る道も大変な混雑だった。カステラ屋台に大行列が出来ていた。小麦粉を焼く良い匂いがする。玄関前への置き配の注文だったので配達先の人に会ってはいないがマンションを出るのも嫌になるのも分かる人混みだった。高齢者の方であったら酉の市が混む夜間の時間は外出が難しい人もいるだろう。
翌日の今日もちょっとした災難があった。配達先のマンションに到着したらエレベーターが停止しており点検中の札がかかっていた。3階への配達だから階段で移動出来たががこれが10階だったらと思うとぞっとする。僕の住んでいるドヤも先週の昼間にエレベーターの点検を行っていた。もしかしたらエレベーター点検の多い時期というのが存在するのかもしれない。

酉の市が開催されていた道路。普段は人通りはまばら。

酉の市の案内ポスターがあった。開催時間が午前11時から午後23時となっている。昨日ネットで調べたときは10時から21時と書かれていた。どちらが正しいか分からない。
そう言えば僕は財布を持っていない。現金を持ち歩く習慣がないから必要無い。いつもスマホで決済している。現金が必要なのは寿町のスーパーのダモアさんで買い物をする時とラーメン屋に行った時くらいだ。スイカとペイペイがあればほとんどの店で会計が出来る。小銭入れさえ持っていない。小銭がある程度貯まれば駅の切符売り場に行きまとめてスイカにチャージしている。僕は心底財布を必要としない人間であるし必要で無い物を持ち歩く必要も無い。だが女性にはこの理屈が通用しない。仲良くしていた女性は僕が財布を持っていないことに不満だった。そこには良い歳をしているんだからクレジットカードくらい持っていてよというニュアンスがあったように思う。思い出して腹が立ったから電話するともう寝ていると逆に怒られた。時計を見ると22時だ。まだ寝るような時間じゃ無い。
僕の住んでいるドヤは同階ごとの共同郵便箱だから同じ階に住んでいる住民の郵便物は全てまとめて1カ所の郵便箱に入れられる。だからよその人に届いている郵便物も目にする機会がある。カタログのような物が届いている人も居るし個人間の手紙のような物が届いている人もいる。結構多いのが赤色だとか黄色だとか目立つ封筒に入った債権回収の督促状だ。そういった類いの郵便を共同ポストに入れられてはたまらないと思う。昨日ドヤの住人宛に一斉に非課税世帯への5万円支給の案内が届いていた。支給は1ヶ月先らしい。世の中色々と値上がりしているから生活困窮者への支援だ。5万円あれば12月の旅行はネカフェではなくホテルに泊まれるだろう。ただし僕には支給の案内は届いていない。
京都に帰るまで残り1ヶ月を切った。楽しみな気持ちが圧倒的に強いが1つ気がかりな点もある。今何をしている? と言う質問は必ず姉の口から出る。気が重い。日本三大ドヤ街の1つの寿町に住んで日銭を稼いで何とか生きてるよ。なんて絶対に言えない。嘘をつくのも避けたいし嘘にならない程度に誤魔化して伝えるしかない。フロント(帳場さん)付きの物件(ドヤ)に住んで顧客と企業(ウーバー本社)の橋渡しをする仕事(ウーバーデリバリー)をしているよ。なんてのはどうだろう?めちゃくちゃかっこいいと思う。
横浜に詳しくない人は横浜の中心地を横浜駅周辺だと思っているのではないだろうかと思う。ウーバーの配達を始めてから最近色々と横浜の地名を出しているから1度分かりやすいように書いておこうと思う。まず結論から言うと横浜の中心地は横浜駅では無い。横浜駅だと言い張る人もいるかもしれないが横浜在住の人間で横浜の中心地を横浜駅だと答える人間は100人に1人も居ないと思われる。横浜の中心地はみなとみらいだ。ランドマークタワーも観覧車も赤レンガ倉庫も横浜の有名な観光地の大半はみなとみらいにある。みなとみらいのすぐ近くには横浜スタジアムと日本大道(にほんおおどうり)のある関内駅が存在する。日本大道には神奈川県庁があり官庁街となっている。こちらの日本大道近辺を横浜の中心地だと答える人も少なからず存在する。日本大道の近くには横浜中華街と山下公園もある。横浜中華街を超えれば高級ブティックの建ち並ぶ元町がある。元町の近くには横浜でみなとみらいの次に高級な住宅街として知られる山手がある。そして僕の住んでいるドヤ街寿町も元町の近くだ。みなとみらいから徒歩10分ほどの距離にはゆずや山崎まさよしの歌で有名な桜木町もある。神奈川随一の飲み屋街である野毛も近くだ。みなとみらい周辺にはいくつもの栄えた街が存在しており名実ともに横浜の中心地となっている。
最近このブログで頻繁に名前の出てくる伊勢佐木モールは全長1.2キロの巨大ショッピングモールでこの伊勢佐木モールの一端が日本大道と横浜スタジアムのある関内駅に通じている。僕はウーバーの配達員として毎日のようにみなとみらい・桜木町・野毛・関内・伊勢佐木モール・横浜中華街・元町・山手あたりをぶらぶらしている。ウーバーをするには良い環境だとは思う。ちなみに僕の出身地の京都も中心地は京都駅では無い。祇園(ぎおん)もしくは四条(しじょう)近辺が中心地だ。
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